下肢のしびれ、
冷感について

下肢とは、股関節より下の脚(足)の部分のことを言います。この部位にしびれや冷感を感じるという場合、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛などの整形外科領域疾患、甲状腺機能低下症や更年期障害といったホルモンの分泌に関係する病気という可能性も考えられますが、当院では主に血管が原因とされる足のしびれや冷感がみられる病気の診療にも注力しています。
具体的には、動脈硬化によって足の血管の血行が悪くなって引き起こされる足の動脈硬化とも呼ばれる閉塞性動脈硬化症、血管壁が何らかの原因で炎症を発症し、それによって血管内が狭窄するなどして、上記の症状がみられるバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)などです。足のしびれがなかなか治まらない、足先がとてもヒンヤリしているという場合は、一度ご受診ください。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは

主に動脈硬化が引き金となって、足の動脈(血管)に狭窄や閉塞が起きている状態を閉塞性動脈硬化症と言います。初期症状が出にくいのが特徴で、放置が続けば最悪の場合、足に壊死がみられるなどして切断しなくてはならないこともあります。
そもそも動脈硬化は、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症 など)の発症、あるいは喫煙などをきっかけに引き起こすようになります。この動脈硬化の進行によって足の血管に血液が通いにくくなることで、足のしびれや足先のヒンヤリ感などがみられるようになるのです。なお閉塞性動脈硬化症は、症状の程度によってⅠ度(最も軽度)~Ⅳ度(最も重度)に分類されます。
Ⅰ度では無症状な場合も珍しくなく、足にしびれや冷感がときにみられるといった程度です。足先が他の部位(腕、首 など)よりも冷たい、足の血管が弱々しいなどの傾向がみられます。Ⅱ度は間欠性跛行がみられている状態です。これは歩いている途中で足(ふくらはぎ など)に痛みが強く出て歩けなくなってしまうものの、少し休みをとるとまた歩けるようになりますが、歩き続けるとまた痛みで歩けなくなるという状態を繰り返すようになります。Ⅲ度は安静にしている状態でも足に痛みが現れている場合で眠れなくなることもあります。また足先に手を触れると、とても冷たく感じるようになります。Ⅳ度は、足に潰瘍や壊死の症状が出ている状態で、足先の傷がなかなか治りにくいという場合は要注意です(糖尿病患者さんによくみられる)。
検査について
上記の症状を確認した場合、まず触診として足の脈を感じるか否かの確認をし、脈が弱いあるいは感じないという場合に診断をつけるための検査としてABI(ankle brachial index)を行っていきます。これは腕と足首の血圧を測って比較する検査で、この数値が0.9未満の場合に発症の可能性が高いとされ、さらに画像検査(下肢エコー、CT、MRIなど)で病変の場所や程度を調べていきます。
治療について
症状がそれほど重くない場合は、日頃の生活習慣を見直す(栄養バランスを考えた食事、禁煙・節酒、1回30分程度の有酸素運動(ウォーキング など)を継続的に行う)ことをしていくほか、薬物療法として血流を改善させる薬(抗血小板薬)も併行して行っていきます。
上記の治療法では血流が改善しない場合は、外科的治療による手術療法となります。内容としては、血管を拡張させる血管カテーテル治療、人工血管などで新たな血液の通り道を作っていくバイパス手術、動脈硬化を引き起こしている血管から沈着している物などを取り除く内膜除去術などが行われます。
下肢閉塞性動脈硬化症
下肢閉塞性動脈硬化症とは
下肢閉塞性動脈硬化症とは、主に足の動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりする病気です。血流が十分に届かなくなることで足の筋肉に酸素が供給されにくくなり、歩行時に足の痛みやしびれが現れます。これを「間欠性跛行」と呼びます。進行すると安静時にも痛みが出たり、皮膚が冷たく感じたり、色が悪くなることがあります。最終的には潰瘍や壊疽(えそ)といった重篤な合併症を引き起こすこともあります。高齢の方や喫煙者、糖尿病や高血圧などの生活習慣病がある方に多く見られます。早期発見・治療が大切な疾患であり、日常生活で「足が冷たく感じる」「歩くと足が痛む」と感じる場合は早めの受診をおすすめします。
検査について
下肢閉塞性動脈硬化症が疑われる場合、まず問診と視診、触診で症状や足の冷感、色調などを確認します。続いて、代表的な検査としてABI(足関節上腕血圧比)検査を行います。これは両腕と両足の血圧を測定し、足への血流がどの程度低下しているかを数値で評価する方法です。また血圧脈波検査や足の血管エコー(超音波)検査により、動脈の詰まり具合や血流状態をより詳しく調べることができます。さらに詳しい検査が必要な場合は、CTやMRIを使った血管撮影検査を行うこともあります。これらの検査によって病気の進行度を正確に把握し、適切な治療方針を決定します。痛みの少ない検査が中心ですので、安心してご相談ください。
治療について
下肢閉塞性動脈硬化症の治療は、病状の進行度や患者さんの生活習慣に応じて段階的に行われます。まずは禁煙や食事療法、適度な運動など生活習慣の改善が基本です。軽度の場合は、血流を良くする薬物療法によって症状の進行を抑えることができます。歩行訓練も有効で、定期的な運動によって血流を改善する効果が期待されます。進行した症例ではカテーテルを使った血管拡張術(バルーン治療)やステント留置、さらにはバイパス手術といった外科的治療が選択されることもあります。また足の冷えやしびれなどには神経の影響がある場合もあるため、必要に応じて他の疾患との鑑別も行います。早期治療により重症化を防ぎ、快適な日常生活を取り戻すことが可能です。
糖尿病
糖尿病とは

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気です。主な原因はインスリンという血糖を下げるホルモンの作用不足や分泌不足です。糖尿病には自己免疫によって膵臓のインスリン分泌が低下する1型糖尿病、生活習慣や加齢によりインスリンの効きが悪くなる2型糖尿病、妊娠中に発症する妊娠糖尿病などがあります。初期は自覚症状がほとんどなく、気付かないまま進行することも少なくありません。放置すると動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞、腎不全、網膜症、神経障害などの合併症を引き起こす恐れがあります。血管が損傷を受け血流が悪くなり、足先や指先などに冷えを感じることもあります。糖尿病は早期発見・早期治療が重要であり、定期的な健康診断や血糖値のチェックが予防と管理の第一歩です。
検査について
糖尿病の診断や経過観察には、血液検査と尿検査を組み合わせて行います。代表的な検査は空腹時血糖値と75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。また過去1〜2か月の平均血糖を示すHbA1cは、診断や治療効果の評価に欠かせません。尿検査では糖の有無や蛋白尿を確認し、腎機能障害の早期発見に役立ちます。さらに合併症の有無を調べるために眼底検査、神経伝導検査、血圧測定、動脈硬化検査などを行うこともあります。糖尿病は無症状で進行するため、血糖値が基準値内でもリスクが高い場合は定期的な検査が推奨されます。当院では採血から結果説明までをスムーズに行い、患者さん一人ひとりに合わせた検査スケジュールを提案しています。
治療について
糖尿病の治療は、血糖コントロールを行い合併症を予防することが目的です。基本は食事療法と運動療法で、食事は栄養バランスと摂取カロリーの調整、運動は有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されます。生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合は、内服薬やインスリン注射などの薬物療法を行います。薬には血糖を下げる作用のほか、体重減少や心血管保護効果を持つものもあります。治療方法は年齢や合併症、生活スタイルに合わせて選択され、自己測定による血糖チェックも重要です。また糖尿病は長期にわたり管理が必要な病気のため、医師・管理栄養士・看護師など多職種が連携し、生活習慣の見直しや治療の継続をサポートします。定期的な通院と検査が、良好な血糖コントロールの鍵です。
混合性結合組織病
混合性結合組織病とは
混合性結合組織病(MCTD)は、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、多発性筋炎など複数の膠原病の特徴が混在して現れる自己免疫疾患です。免疫の異常により自分の体を守るはずの抗体が誤って自身の組織や臓器を攻撃し、皮膚、関節、筋肉、内臓など全身に炎症や障害を引き起こします。初期症状としては手足が冷たく感じる、色調変化(レイノー現象)、手指や顔の腫れ、関節痛や筋力低下などが見られることがあります。病気の経過は個人差が大きく、重症度も軽症から重症まで幅広く、心肺機能や腎機能に影響を及ぼす場合もあります。早期発見と適切な治療が重要であり、自己判断せず専門医の診察を受けることが推奨されます。
検査について
混合性結合組織病の診断には、症状の詳細な問診と身体診察に加え、血液検査や画像検査を組み合わせて行います。血液検査では自己抗体の有無が診断の手がかりとなり、特に抗U1-RNP抗体の陽性が特徴的です。また炎症反応(CRPや赤沈)、筋酵素(CK値)、腎や肝の機能、血液の酸素状態なども確認します。レイノー現象や皮膚症状の評価には毛細血管顕微鏡検査が有用です。肺や心臓の状態を把握するために胸部X線や心エコー、呼吸機能検査を行う場合もあります。複数の膠原病の特徴を併せ持つため診断は単一の検査結果だけでなく、症状と検査所見を総合的に判断します。定期的な検査による経過観察も重要です。
治療について
混合性結合組織病の治療は、症状の程度や臓器への影響に応じて個別に行われます。基本となるのは炎症を抑える薬物療法で、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が主に使用されます。必要に応じて免疫抑制薬(メトトレキサート、アザチオプリンなど)や抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)を併用します。肺高血圧症や腎障害など合併症がある場合は、それぞれに対する専門的な治療が必要です。また寒冷刺激の回避や適度な運動、バランスの取れた食事など生活習慣の工夫も再発予防に役立ちます。治療は長期にわたることが多く、副作用や病状の変化を見逃さないために定期的な通院・検査が欠かせません。早期の診断と継続的な管理が、良好な生活の維持につながります。
レイノー症候群
レイノー症候群とは

レイノー症候群とは、寒さやストレスなどの刺激により手足の血管が一時的に過度に収縮し、血流が悪くなる病気です。主に指先や足先が白くなり、その後青紫色に変化し、やがて赤く戻るという3段階の色の変化が特徴です。発作時にはしびれや痛み、手足に冷たい水が走ったような感覚が生じることもあります。女性に多く見られ、とくに20〜40代で発症することが多いとされています。レイノー症候群には原因が特定できない「一次性」と、膠原病など他の病気に関連して起こる「二次性」があります。日常生活では冷え対策が重要であり、冬場や冷房の効いた場所では注意が必要です。放置すると皮膚潰瘍や壊死を起こすこともあるため、早めの診断と適切な対処が大切です。
検査について
レイノー症候群の診断には、まず問診が重要です。寒さやストレスによって手足の色が変化するか、発作の頻度や症状の経過を詳しく伺います。そのうえで皮膚温や血流を確認するための「毛細血管顕微鏡検査」や「皮膚灌流圧検査」を行うことがあります。また膠原病などの疾患が隠れていないかを調べるために、血液検査で抗核抗体や自己抗体の有無を確認します。一次性か二次性かを見極めることは治療方針を決めるうえで非常に重要です。さらに寒冷刺激負荷試験やレーザーを使った血流測定など、特殊な検査を行うこともあります。症状が軽くても背後に重大な病気が隠れていることがあるため、気になる症状があれば早めにご相談ください。
治療について
レイノー症候群の治療は、まず生活習慣の見直しから始まります。寒さを避け、手袋や靴下で手足をしっかり保温することが基本です。ストレスも発作を誘発するためリラックスを心がけることが重要です。一次性レイノー症候群の場合は生活改善で症状が軽減することが多いですが、日常生活に支障がある場合には血管拡張薬(カルシウム拮抗薬など)を用いることがあります。一方、膠原病などの病気が原因の二次性レイノー症候群では原因疾患の治療が優先されます。放置すると潰瘍や壊死を起こすリスクがあるため、早期の対応が必要です。当院では患者様一人ひとりの症状に合わせた治療法を提案し、日常生活の質の向上を目指します。
バージャー病
バージャー病とは
バージャー病は、閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、血管壁が何らかの原因によって炎症を起こしてしまい、それによって、足や腕の血管が狭窄、あるいは血栓が作られて詰まるなどして、様々な症状が起きている状態を言います。発症の原因は特定されているわけではありませんが、喫煙者がよく発症していることからタバコとの関係性が指摘されています。
主な症状は、足や手のしびれや冷え、レイノー現象(血流が悪くなることで指先などが真っ白もしくは紫色に変色している状態)のほか、間欠性跛行が現れることもあります。血管の詰まりが酷ければ、壊死することもあります。
検査について
バージャー病は、閉塞性動脈硬化症と症状がよく似ているので、しっかりと鑑別する必要があります。血圧検査や超音波検査を行うほか、血管造影検査によって血管が狭窄している状態などを確認していくことで診断をつけていきます。
治療について
治療を行う前にまず禁煙をする必要があります。そのうえで薬物療法として、血管拡張薬や抗血小板薬といった薬物療法を行っていきます。
また安静時でも痛みがある、壊死症状などがある、薬物療法では改善が困難という場合は、手術療法としてバイパス手術(詰まっている血管の部分から新たに血管をつないで血流を改善させる)のほか、交感神経節ブロックや交感神経節切除手術などが行われることもあります。
tel.03-5755-3612
- 院長
- 南雲 正士
- 診療科目
- 内科、循環器内科、心臓血管外科
生活習慣病、予防接種、健康診断 - 住所
- 〒146-0082 東京都大田区池上7-6-5
池上メディカルブリッジ 3F - 最寄駅
- 東急池上線池上駅 本門寺方面出口 徒歩3分(180ⅿ)
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